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ICUにおける疼痛リスク推定AI

ICUのベッドサイドモニターが自動記録する生体信号だけから、看護師が評価する疼痛スコア(CPOT)が高い状態を推定するモデルを研究している。東北大学との共同研究として取り組んでいる(東北大学病院の倫理審査承認のもとで実施。承認番号 2025-1-395)。

背景

集中治療室では、患者の多くが強い痛みを経験する。痛みの評価にはCPOT(Critical-Care Pain Observation Tool)などの行動観察スケールが広く使われているが、看護師や医師がベッドサイドで繰り返し観察して記録する必要があり、負担が大きく、評価が遅れれば処置も遅れる。心拍数や血圧のような自動記録される信号から高い疼痛スコアの兆候を推定できれば、再評価の優先順位付けを支え、医療者の負担を軽くできる可能性がある。

取り組み

この研究には2つの柱がある。

機械学習で扱える臨床データセットの整備。 東北大学病院ICUで収集された記録をもとに、891名の患者から23,092件のCPOT評価と、その直前180分のベッドサイド信号(心拍数・血圧・呼吸数など16種類、1分間隔)を正確に対応付けたデータセットを構築した。総記録時間は6万時間を超える。公開ICUデータベースでは疼痛スコアと信号の時刻合わせが粗いことが多く、分単位で同期したこの規模のデータセットは時系列モデルの学習基盤として大きな価値を持つ。

生理学的グループ化に基づくモデル設計。 開発したモデルは、16種類の信号を循環器系・呼吸器系・体温系の3グループに分け、グループごとに共通の特徴を抽出してからTransformerで統合する。年齢・性別や鎮静スケール(RASS)のような手動入力を一切使わないため、推論は完全に自動化できる。評価では、比較したモデルの中で最高のAUROC(0.7124)を達成した。グループ化を外すと精度が下がり、特に循環器系の信号を除いた影響が最も大きかった。痛みが自律神経系や血行動態の変化を伴うという臨床的な知見とも整合する結果である。

位置づけと今後

この研究は後ろ向き研究であり、モデルの出力は較正された確率ではなくスコアとして扱う必要がある。痛みを診断する道具ではなく、ベッドサイドでの再評価を優先すべき患者の特定を支援することを目指すものであり、臨床導入には外部検証・較正・前向きな運用評価が必要である。医療機関とともに生体信号のAI研究を積み重ねる、当社の医療・ヘルスケア分野の取り組みの一つである。

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